労働基準監督署が調査や指導を行なう際、最も重要視するのが就業規則の存在とその内容です。
常時10人以上の事業所では届出義務がありますから、未届の場合は厳しい指導がなされるのは当然のこととして、すでに届出を済ませてある事業所についても、多くの場合、就業規則の内容が問題とされます。
例えば、「名ばかり管理職」の問題で労働基準監督署が残業代の未払いを指摘する場合、必ず残業代の単価に誤りがないかを確認することになりますが、その根拠はやはり就業規則です。
営業マンの残業代を毎月、固定の手当で支給している場合も、みなし労働時間制を採用している場合も、年間カレンダーを作って勤務日程を管理している場合も、いずれも就業規則に基づいて運用していることが求められます。
また、入社14日までの試用期間中の労働者を予告期間を置かずに解雇する場合も、基本的には就業規則に試用期間に関する規定がなければなりません。
労働者を解雇する場合や、減給や出勤停止などの懲戒を与える場合も、そのための要件と手続きは必ず就業規則の規定による必要があります。
特に、労働者からの相談や申告を受けて、労働基準監督署が事業所を指導する場合には、以上のような視点から、就業規則の内容について厳しい確認が行なわれることになります。
いざ、指摘を受けたときに決して慌てることのないよう、常日頃から意識的に就業規則の整備に心がけ、その内容の把握につとめることが求められます。